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「南京貨物」という、宜興紫砂壺に出合う

 1996年秋、「香港茶具文物館」に行くと【羅桂祥珍藏宜興紫砂陶器】が催されており、常設展示品の他に「南京貨物」として二つの茶壺が展示されていました。これはいわゆる海上りの品で、夢をかき立てるトレジャーハンティングの世界です。まあそれよりも海のシルクロードの歴史的な検証に、意義があると思います。
 それにしても海中に250年余り沈んでいたこの容姿には、伝世品にはない風格があります。明〜清代は景徳鎮の青花磁器が大量に海を渡って、東南アジア、中近東、欧州に輸出されています。それと共に茶や絹織物、宜興の茶壺も舶載されたのでしょう。

南京貨物

南京貨物

 茶具文物館のパンフレットから引用します。
 約1750年~1760年から、欧州各国の貿易品広告やオークション目録には中国貿易磁器の総てを「南京」と称して、中国南京の製造磁器を一般に広く指します。しかし事実上、それらの正しい産地は江西の景徳鎮のはずです。
 また1986年のアムステルダムの沈船積載品のオークションで、沈没船Geldermalsen号から引き上げられた18世紀の中国輸出磁器を、依然として「南京貨物」と称しています。

また、「宜興紫砂辭典」吳山著・2002年刊_唐人工藝出版 を参照します.
 [外銷壺]
 主に欧州に輸出された宜興紫砂の茶壺を指す。17世紀の末期~18世紀の初期、ヨーロッパに輸出する紫砂茶壺、一般の茶壺上に施銘のものはなく、常に粘貼による浮き彫りの梅の枝あるいは竹の枝の紋様を施して、蓋のつまみ(鈕)の装飾は獅子を形どり、紋飾は大部分が型の印か打印で、泥質はすべて朱泥で作成して、紫泥あるいは黄泥は珍しい。オランダとイギリス博物館の収蔵の宜興紫砂壺はすべてこれらの形と構造で、これと国内販売の壺は著しい違いがある。羅桂祥博士の予想によると、宜興壷の欧陸への輸出した年限は50年を上回らないで、その後景徳鎮の青花磁器に次第に取って代られた。

「紫砂西漸」
 宜興紫砂器のヨーロッパ輸出を指す。沃爾卡《磁器壺とオランダ東印度公司》(ライデン、1971):オランダ公司の記録によると、1680年に約1635件の茶壺(宜興製品)がアムステルダムに到着した。
 沃爾卡《荷蘭東印度公司》:登記簿中に1679年漳浦から運んでバダヴィア(現ジャカルタ)に到着した七箱の朱泥茶壺を記載する。および次の年マカオの輸出口より350件の浮き彫り紋飾の朱泥壺の記載。葛登《外銷瓷器》:イギリス東印度公司の記録、1699年ナッソー号が運んでロンドンに到着した82件の朱泥のチョコレート杯。
 ヨーロッパ輸出の宜興紫砂壺には三つの共通点がある:1.大部分が明るい色の朱泥の製品。2.非常に少ないが陶工印があるものが含まれている。3.普通は「ヨーロッパの題材」を使わないで装飾されている。多くの茶具はオランダとイギリスの貨物船によって西方に到着した。


沈船の積載品の「茶壺」売立て会があったらしい

 海洋考古学者 Sten Sjostrand氏
 スイス人で海のシルクロードといわれる中世からの海上貿易に興味をを持ち、1992年からマレーシア海域を調査して、これまでに11世紀から19世紀に至る11隻の沈船を発見する。その積載貨物の調査研究をして、世界的な海洋考古学的研究者となる。マレーシア博物館との共著で「明代の沈船『万歴号』」を発刊する。

 さて、ある日YouTubeを見ていたら、どこかでこの方の沈船積載品の茶壺を販売する会があったようで、そのニュースがアップロードされていました。
タイトルは「Antique Yixing teapots」です。

▲会場となった店舗の様子。お客さんが茶壺を点検しています。

▲左がSten Sjostrand氏、レポーターと客人に応答している様子。

▲海底から引上げられ、洋上の船に並べられた茶壺。ほとんどが梨形壺です。

▲壺内の塩分でも計っているのでしょうか。引上げた茶壺で淹れた茶を皆さんに飲んでもらい、実用できる茶壺であることを体験してもらっているのでしょう。

 彼のパンフレットでは「“クラーク(克拉克)”磁器。
 中国の陶磁器貿易は唐代に始り、当時は唐三彩などアラブ民族文化の色彩が濃厚なものが主で、伝統的な中国磁器は少なかった。宋、元代は青白釉磁器が東南亜細亜に、竜泉窯の青磁は日本、朝鮮、フィリピン、トルコ、欧州に向け出荷された。明清の時代になり青花(染付)磁器が大量に欧州、日本、東南亜細亜に輸出された。
 1603年、オランダ武装船団はマラッカ海峡で一隻のポルトガルの大帆船を捕まえて、この船は約60トン、約10万件の中国磁器を積載していた。次の年、この磁器はアムステルダムのオークションに送られて、ヨーロッパ全体を沸き立たせました。その時、オランダ人はポルトガルの東方の遠洋に航海する貨物船を“クラーク”と呼称した。これはオランダ語で“ポルトガル軍艦”の意味です。そこで、ヨーロッパでオークションされる中国の磁器は“クラーク(克拉克)”の磁器と命名されます。(Googleの画像検索に「克拉克瓷盘」と入力すると、青花磁器皿が沢山出てきます)

販売されている茶壺を見ると欲しくなる

 ネットで販売しているサイトを発見!ビサ、アメックス、マスターなどのカードでOK。どうですあなたも一つ欲しくなりますよ。

 この茶壺はUSD.540で販売されていましたが、SOLDになってしまいました。現在の日本円ですと43,700円ほどです。これは蓋裏に欠けがあるので安めの価格なんでしょう。しかし買えない値段ではなく、ついカートのボタンを押してしまいそう。
現在でもUSD650〜1280で、何点か販売されております。日本でこんな茶壺を持っている人はいないでしょう。見せびらかして自慢できますね〜(笑)。